屋上の扉を開けると突き抜けるような青空が広がっていた。
春とはいえまだ少し肌寒い。


バンコは柵にもたれ、ゆっくりと煙を吐き出す。
「誰もいねぇなー」
風が顔に当たって気持ちがいい。
煙草の煙は風に乗って空高く舞い上がって消えていく。


「まあ皆、午前中に帰っちまっただろ」
ジミーはバンコの前に立つと煙草を取り出し火を付けた。


今日は三年生の卒業式ということで、普段着ることのない学ラン姿で先輩達を見送ったばかりだった。
しかしその学ランは酷く汚れている。



「ほんっと、あのマッスルくんによく勝てたよなぁ…ジミー!」
バンコはジミーの胸を軽く小突いた。
「シュギョーの成果だよ、シュギョーの!!」
ジミーはお返しと言わんばかりにバンコの頭をグシャグシャと撫でる。
そして真顔になると
「もう負けたくなかったからな・・・」
と、呟いた。


ピンコの件はジミーにとってかなり大きな傷となって残ったのだろうとバンコは思った。


自分も負けたし、ジミーも負けた。
あの時、ジミーが苦しんでいたのを知っていたのに何も出来ない自分がもどかしかった。


しかし今日は二人とも勝った。


あの負けがなければきっと勝てなかったに違いない。



バンコは吸っていた煙草を地面に落とすと
「見ろよ、口ん中も傷だらけになっちまった」
と言ってジミーに見えるように口を開いた。


「んだよ、そんなの俺だって・・・」
ジミーも喧嘩の勲章を見せようと煙草を離した瞬間、バンコの唇がそこに重なった。


「ん・・・!!」


バンコの柔らかな舌が侵入してくる。
煙草と血が混じり合った味がした。


「はぁ・・・っ」


ジミーはバンコを抱き寄せるともっと深く口付けた。
舌が絡まり合って息遣いが荒くなる。
ふと、ジミーの歯がカチリとバンコの唇のピアスに当たる音がした。


「ふふっ」と、どちらともなく笑いが漏れる。


バンコは背伸びをしてジミーの耳元で囁いた。
「なぁ・・・もっと、続きしてくれよ」
その淫らな響きにジミーの身体が熱くなる。
ジミーはバンコの髪を撫でながら耳に舌を這わせた。


「俺も、バンコを抱きてぇ・・・」
バンコの耳のピアスにジミーの歯が当たり、またカチリと音がした。
「ピアス、好きなのか?」
バンコは笑いながらジミーに問い掛ける。
ジミーは
「こんなに付いてりゃ噛み付きたくなるんだよ」
と笑い返した。



ジミーはキスをしながらバンコのシャツのボタンを片手で外していく。
「ここんトコ、アザになってるな・・・」
バンコの細い体に赤いアザが所々目立っている。
「あぁ・・・さっき付いたヤツな・・・お前だってどうせアザだらけだろ?」
そう言ってジミーのシャツをめくってみると鮮やかな入れ墨が現れた。
「ハハ・・・!どれがアザかわっかんねぇな」
バンコは少し笑ってその美しい模様に口付けた。


「ジミーの身体も、彫り物も、全部・・・・好きだぜ」
バンコは手で唇で、ジミーの身体を愛撫する。
その姿を見ているとジミーは愛おしくてたまらなくなった。


「バンコ・・・・・」




柵に背にバンコはジミーの硬くなったそれを受け入れる。
「あっ!ジミー・・・!」
擦られる度にガシャガシャと柵が金属音を立てる。


「はぁっ・・・!あんま・・・激しくされっと・・・・落ちる・・・かもっ」
バンコは苦笑しながらジミーの腕にしがみついた。
「バンコ、悪ィ・・・加減出来なくて」
ジミーはしっかりとバンコを抱きしめる。


「はぁっ・・・・!」
バンコはジミーの学ランに顔を埋めた。
ジミーの匂いがする。


「も・・・イキそう」
「俺も・・・!」
ジミーはそう言って自分自身を抜こうとするとバンコが首を振った。
「中が、いい・・・・お前の・・・全部くれよ・・・」

「いいのか・・・・?」


バンコは笑って頷く。


「っ!!」
バンコの中がジミーの放ったもので満たされていく。
バンコも身体を震わせてジミーの腕の中で果てた。


「ニヒヒ・・・ワリィ、ジミーの学ラン汚しちまった・・・」
悪戯っぽく笑うバンコにジミーはつられて笑う。
「あんまり着ねぇから大丈夫だろ」
ジミーはバンコの金色の髪をゆっくり撫でた。



「やっぱ喧嘩勝った後のセックスって気持ちイイな」
バンコが乱れた服を直しながら立ち上がる。
「確かになぁ」
ジミーもゆっくりと立ち上がる。
「じゃあ、これから喧嘩に勝った後は絶対にしようぜ」
約束、約束と言ってバンコはジミーの頬にキスをした。


ジミーはこれからは絶対負けられねぇなと思いながら屋上の扉を開けた。
バンコがその後を追う。


二人の楽しそうな笑い声が聞こえて扉は閉まった。